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東京駅_3
この広い東京駅で、人を見つけるのは困難だと思っていたが、案外簡単に見つかった。
なぜなら、私よりも先に到着していた真臣が、浮気相手とメロドラマを繰り広げ、山陽新幹線の南乗り換え口の人の流れが、明らかに彼らがいる場所を避けていたからだ。
私から連絡を受けたあと、武内さんと直接連絡を取り合ったのかもしれない。
三年付き合った彼氏に浮気されて、もっと悲しいはずなのに。心が麻痺しているのか、それともこれを現実だと思っていないのか、彼らを見ても何だか他人事のようだった。
泣きわめく女と、肩を抱いてなだめる男。
武内七瀬と名乗った女性は、電話の声や話し方から年下を想像していたが、二十六歳の私よりも年上に見えた。実年齢は三十歳前後なのだろう。
背中の中程まである黒髪は一つに束ねてあり、私と同じくらいの長さだ。無地のワンピースにカーディガンと、服装は至ってシンプルで、服の趣味もなんとなく似ている気がした。
少し離れた場所から眺めていたら、二人が人目も気にせず抱き合った。唇が触れそうなくらいに顔を近づけて見つめ合っているので、どうやら二人の間で結論が出たらしい。おそらく私の出番はない。
私は第三者に成り果て、ただそれを眺めるしかなかった。動きたくても動けない。
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