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とある地方の村に口伝がある。
宴は村で習慣として、春になると豊作の祭を開くようになった。
残念ながら少女はこの村に戻ることはなかったが、不思議な事に毎年桜の花を観ながら宴を開くと、豊作の年が続いたと。
やがて少年は成長すると、旅に出た。全ての人々に豊作の祭を伝える為に。全国津々浦々にまで浸透するように。
当初は疎まれたり、迫害されたりと心労がたたることもあったそうだが、その行動により偉業として各地で歓迎され、時の帝にまで認知、歌を読まれるまでになり、やがて日本という国において花見という文化そのものを植え付けたのだった。
そして彼は生涯において、その命の灯が尽きるその日まで、桜を愛でる宴を、再生を願う祭を各地で取り仕切り、立ち止まることはなかった。
時代に進むにつれ、この話は散在してゆき、宴本来の目的や少年と少女の名前は消失していったが、現代に至るまでその風習は楽しまれようになったという。
完
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