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そして、人混みの中歩いていくと、どんどん人が減っていくエリアへと進んでいく。
「ん。段差いける?」
「あっ、はい」
そして社長に連れられて辿り着いた場所は、関係者席なのだけど・・・。
「えっ、ここですか?」
「そう」
「こんなとこいいんですか?」
「いいから連れてきたんだろ」
「だって、こんな特別感ある場所」
「とりあえず座るか」
「あっ、はい」
普通にいつも自分たちが見るような土手みたいな草むらの上に座る感覚で考えてたら、思ってたのと全然違っていて。
テラスみたいな場所に間を開けて均等に並んでいる椅子。
そしてその椅子には、すでに座っている何組かのカップル。
その椅子に座ってみると、そのテラスがオープンになってかなりの広い空間になってるせいか、隣とのカップルとも距離が十分すぎるほど開いていて、全然気にならない。
「大丈夫ですか? こんなとこ二人で」
「何が? こんなとこ知ってるやつ誰もいねぇよ」
「あっ、そっか。こんなすごい空間誰も知ってる人来れないか」
「それに誰かいたとこで、こんな雰囲気いい空間でわざわざ他のカップル見てるバカいねぇだろ」
「フッ。確かに。でもまさかこんな素敵な雰囲気のとこで花火見れるとは思わなかったです」
「ここの主催者と仕事したことあってさ。今回のこの席も向こうが招待してくれたんだ」
「すごい・・・。じゃあ、もし、あたしと会わなかったら、ここは他の誰かと見るつもりだったんですよね・・・?」
「そうだな。元々二人で見る予定だった」
「えっ? それって・・・」
もしかして・・・。
「柾弥と」
「・・・え?」
あれ? 藤代さんじゃなくて・・?
「何?瑞希と見るとでも思った?」
「あっ、一瞬」
「元々瑞希と見る予定はなかったよ。この仕事も柾弥と二人だし。瑞希は瑞希でここの関係者とオレらと別の打合せで来てたんだよ。んで、オレらもさっき偶然会って一緒に歩いてただけ」
「えっ、そうなんですか?」
「そんなタイミングでお前に会って、お前はお前で盛大に誤解して面倒なことになってるし」
「うっ・・すいません・・・」
「だから元々お前が心配することとかまったくないんだけど?」
「ですね・・・。でもそれじゃあ、あたしと会わなかったら本村さんとこの空間で並んで、二人でいい雰囲気で見てたってことですか?」
「そうなるな(笑)」
「えっ、なんかそれも見たかったかも(笑)」
「なんだそれ(笑) でもまぁ柾弥とは気遣わずいられるから」
「あっ、じゃあ、あたしお二人の邪魔しちゃいました!?」
「は?」
「だって本村さんに悪いことしたなって」
「いや、あいつがお前連れてけばいいって言ってくれたから」
「本村さんが?」
「そう。お前見かけてはぐれた後、お前探しに行こうとしたら柾弥がそう言ってくれた」
「やっぱり本村さんいい人だ」
「まぁあいつも別の関係者席用意してもらえたみたいだし、向こうは向こうで楽しむって言ってたから気にしなくていいよ」
「はい。今度本村さんに会ったらお礼言わないと」
「オレもここ来るまではこんな雰囲気いいとことは知らなかったから、お前と出会えて、一緒に来れてよかったよ」
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