22.幸せな夏の想い出

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「てか。ここ暗くてマジちゃんとじっくりお前の顔見れねぇな」 「ホントですね。もう少しで始まるっぽいですね」 時間を確認するとそろそろ花火が始まる時間。 「・・・あたしも、今日の社長すごく素敵なので、ホントはもっとじっくりちゃんと見たいです・・・」 花火が始まる前に、あたしもこっそり小さめの声で呟く。 「ん? 何?」 すると、その声が聞こえなかったのか、耳をこっちに傾け、更にあたしの方へと顔を近づける。 「いやっ! 聞こえてないならいいです・・・!」 そんなこともう一回改まって言うのは恥ずかしい・・・。 「フッ。あとでじっくり見せてやるから安心しろ」 「は?え? 聞こえてたんじゃないですかー!」 「聞こえてないとは言ってねぇし(笑)」 「もう社長ー!」 「なぁ。今。オレらここに恋人としているんだけど?」 「えっ、はい」 「なら。その呼び方じゃない方がいいんだけど」 「あっ、そっか」 「じゃあ、どう呼ぶかわかったよな? ?」 意地悪く、だけど甘く、耳元で囁く。 うっ・・・! 久々のいきなりの名前呼び! まったく呼ばれる覚悟してなかった・・・! しかも耳元!その甘い声でこの距離でその何か企んでるような微笑みで! あ~ちょっと花火どころじゃなくなってきた・・・。 そして高鳴る胸を少し落ち着かせてから。 「慧さん・・・」 「ん」 社長はそう一言だけ返して、満足そうに優しく微笑む。 もう・・・好きっっ! その甘い攻撃に、思わずあたしは心の中で溢れてくる言葉を叫ぶ。 ここが外じゃなく誰もいない家とかなら間違いなく大声で叫んでた・・・。 あぁ・・・嬉しい。 社長の隣にいれること。 こんな風に堂々と恋人同士のようにいれること。 いつもと知らない離れた場所だから。 いつもと違う浴衣姿だから。 こんなカップルだらけの暗闇だから。 周りの目を気にせず、ただ隣にいれる社長との幸せをじっくりと噛み締める。 あぁ、ホントはもっと近づきたいな。 もっと触れたいな・・・。 そう思っていたら、気持ちが通じ合ったのか、そう思った瞬間、隣の社長がそっと手を重ねて握ってくれた。 そして、あたしはまた一層その幸せを噛み締めた。
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