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それを合図かのように、タイミング良く花火も打ち上がる。
「うわぁ~綺麗~」
夜の空一面に次々と綺麗に大きく光り輝いて彩る。
一瞬一瞬儚く、だけどとても力強く美しいその輝き。
心地よく吹く風も更に心を癒し、この瞬間この場所で大好きな人と一緒に見れる幸せが、一つ一つ打ち上がっていく花火の数と同じだけ、好きな想いと共に重なっていく。
きっとこの花火一生忘れない。
今まで見た花火の中で、間違いなく一番綺麗で一番幸せな時間。
瞳に、記憶に、すべての花火とこの幸せな時間を焼き付けて、最後の打ち上げ花火が終わると同時に皆から拍手と感嘆の声も上がる。
「綺麗でしたね」
「あぁ」
そして、あたしも隣の社長に声をかけるも。
もう終わってしまった寂しさに少し肩を落とす。
もう社長とお別れかな。もう帰らなきゃだな。
終電なくなる前に、あたしも人混みの中帰らないと。
さっき綾ちゃんたちも心配してくれてメッセージくれたから、その時に知り合いと会えたから一緒に見るって伝えて安心はしてくれてたけど、さすがに今からこの人混みじゃ合流は出来ないし。
今から一人でこの人混みの中帰るのか・・・。
社長とも明日には家で会えるのに、まだ離れたくない気持ちが残ったままで、急になんかいろいろ重なって心細くなる。
「・・・どした?」
「・・・え?」
すると、社長がすかさずそんなあたしを見て声をかけてくる。
「いや、なんか急に沈んだ顔してるから」
「・・・ハハッ。すごいな、慧さんは。こんな時までそんなのわかっちゃうんですか?」
ちょっとだけそんな表情になってただけのはずなのに、この人はなんでこんなにちゃんと気付いてくれるんだろう。
「わかるよ」
「そんなにあからさまに沈んだ顔してました?」
「いや、オレがお前をずっとちゃんと見てるからじゃない? お前のちょっとした変化でもすぐにわかる」
何・・それ・・・。
サラッとそんなすごい嬉しいこと・・・。
そんな少しの変化でも気付いてくれるほど、あたしをずっと気にしてくれてるなんて・・・。
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