23.想いが溢れる夜

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「だから。ん」 「ん?」 「ここ。座って」 そう言って慧さんが自分の膝に座るように合図をする。 「え!? そこ!? なんで!?」 「ん? まだよくわかんねぇし」 「え? わかったって言いましたよね!?」 「やっぱわかんなかった」 「え! なんでですかー!?」 「だから。こことりあえず座って。もっと近くでよく見せて」 「えっ・・・。近すぎません・・・?」 「あ~オレ目が悪いんだよな~」 あからさまに嘘っぽい言い方でそんなことを言う。 「嘘だー!」 「もうしょうがねぇな~」 そう言って慧さんが立ち上がり、あたしの手を引っ張るとその勢いで、そのままあたしを抱きかかえるようにして慧さんとそのままソファーへともたれかかる。 「うわっ!」 そして結局はそのまま慧さんが思う通りにその流れで慧さんの膝に座りながら抱きつく形になっていた。 「ズルいです~」 「お前。いちいちうるせぇよ」 そう言って少し笑いながら、そのままあたしの腰に手を回しながら、グイっともう片方の手で頭を引き寄せて唇を重ねた。 あぁ・・やっぱズルいな。 こんな風にいつも簡単にあたしをどうにでも出来るんだ。 普段はあたしが好きだってうるさくアピールしまくるくせに、いざとなったら尻込みしちゃうことも、全部お見通しなんだよね。 だから、こうやって自然とあたしが受け入れられるようにちゃんと導いてくれる。 こんなに近い距離でこんな状況なら、あたしも自然と慧さんの首に手を回したりなんかして、少し積極的になれたりもする。 慧さんが求めてくれることで、あたしも素直に求めていいんだと思わせてくれる。 唇が離れたあと、お互い見合わせてフフッと笑い合う。 そして慧さんが至近距離のまま、ずっとあたしを見つめて微笑んでいる。
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