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「慧さん・・・?」
「今度は・・・ちゃんとオレだけの為にそうやって綺麗にした姿見せてよ」
あたしの髪や顔に少しずつゆっくりと触れながら、優しく見つめたまま、慧さんがそう囁く。
「はい・・・。慧さんの為にあたしも着たいです」
「ん」
「あっ、そしたら、慧さんも一緒に浴衣着てほしいです!」
「あぁ~そっか。そうだな。そうしようか」
「うわ~嬉しい! 慧さんの浴衣姿見れる♪」
「お前の為だけに着てやるよ」
「へへッ。やった」
「だから、お前もオレの為だけな?」
「もちろんです。あっ、そしたら今度はもうちょっと大人っぽい綺麗系の浴衣着たいです」
「うん。今のもいいけど、また違う感じのも見てみたい」
「はい。楽しみにしてますね」
「ん」
「あっ!」
「何? どした?」
「あの、せっかくなら一緒に写真撮りたいです!」
「え? 写真?」
「はい。せっかく恋人っぽい感じのこと今日出来たんで、その記念に」
「あぁ・・・」
「あっ・・! もし一緒に写真撮るのマズかったら全然大丈夫です!」
そうだよね。あたしのノリでそんなん言っちゃダメだよね・・・。
「いや・・・いいよ。撮ろうか?」
「ホントですか?」
「あぁ。せっかくそんな綺麗な格好してるしな。一緒に撮っとくか」
「ありがとうございます!」
あたしはウキウキで携帯を取りに行って写真を撮る準備をする。
「てか、オレこんなん改まって撮ったことねぇわ」
「え? 前の彼女とか藤代さんとかと二人で撮ったりとかしなかったんですか?」
「あぁ・・うん。ないかも。写真撮るの自体あんま好きじゃないし、そういうの残したくないタチだから」
「えっ、でも仕事関係では写真も映像もバンバン出てるじゃないですか」
「それは仕事だから仕方なくだよ。今のご時世そんなん嫌だとか言ってらんねぇだろ。自分の顔見せて自分の言葉で伝えた方が伝わることも多いし、興味も持ってくれることも多いからな」
「確かに、そのお顔を武器にしないともったないです・・・」
「まぁそれがいいときも悪いときもあるけどな」
「ですよね。そういうこともきっとありますよね。・・・じゃあ、なんで、あたしとは撮ってくれようと思ったんですか?」
「ん? お前だからかな」
「あたしだから?」
「そう。お前だから撮りたいって思った」
「フフッ。嬉しい」
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