17人が本棚に入れています
本棚に追加
…
ミノはパソコンデスクから顔を上げた。
記録室に積まれた書類の山と山の間をぐるぐる抜けていく男がいる。
「おかえり、ハン」
ようやく近づいてきたハンに、ミノは明るく声をかけた。
「ただいま。
どうしたの、この散らかり様」
「いつも、こうだよ」
ハンは小脇に挟んでいたファイルをミノに差し出した。緑色のファイルで表紙はさらに黒い紙が貼られている。中身が見えないように細工されていた。
「極秘?」
「かなり」
「メールしたら良いのに」
「こんな書類、要約できないよ。
俺にはさっぱりだし。」
たしかにファイル自体は分厚い。
中身はフランス語で記されていて、タイトルは「最高峰のドリアの作り方」。暗号化されているのはタイトルだけだった。
「一応、トガニを呼んでる」
ハンは付け足すように言った。
「ああ…医療関係だ。」
「まあね。」
「これは誰からの依頼なの?」
ハンはしばらく考えたあとに「お医者だよ」と答えた。
最初のコメントを投稿しよう!