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トガニはしばらく虚空を見つめていた。
オマーンでの出来事を思い出しているようで、眉間に皺が寄る。それから何かハッキリしたように、明るい顔になった。
「その依頼人は劉と関係がある。」
ミノはしばらく黙って、パソコン画面を見た。それからUSBを挿し込んで、中身をコピーしていく。トガニは続けた。
「手術を受けた男が、術前の記憶を残し、人格を変えないまま、彼の前に現れた。
それで『俺の脳を返せ』って言ったんだな?」
「そうだね」
「その医者は失敗したんだ。」
ミノは52%までコピーしていたUSBを突然引っこ抜いた。気が変わったのか、USBを机の端にやる。それからトガニとハンを見た。
「僕が彼の護衛を引き受けるよ」
「正気か?」
今度はハンが声をあげた。
自分でも、あとから声の大きさに驚いて、声を潜める。
「狙ってるのは、患者だけじゃない。
劉だって、血眼になってこの医者を探してる」
「だからさ」
スッキリした顔でミノは言い換えた。
「彼と接触すれば、劉は近づいてくる。
それって好機じゃないか。」
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