いっぱい、いっぱい。

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「両親は捕まったし、家も取り壊された。でもやっぱり子供の死体は見つからない。しかも、縁起が悪いってんで空き地は誰も買い手がつかない。……困り果てて、町がここを買い取って公園にしちゃったらしい。たくさんお祓いをして、天然芝を植えてさ」  でも子供の霊は成仏できなかったんだ、と僕は声をひそめる。 「自分と同じくらいの年の子……幸せそうな子供達を見ると妬ましくて、その魂を殺して憑りついちゃうんだって。憑りつかれた子供はどんどんおかしくなっていって、虫を食べるようになったり、猫を殺して食べるようになったり……しまいにはニンゲンまで襲って食べるようになってしまう」  みんな、静まり返っている。ちょっと脅かし過ぎただろうか。僕はパン、と手を叩いて告げた。 「幸い、去年優秀な神社のエライ人が来てくれて、子供の霊を鎮めてくれたんだって!だからもうこの公園は安全になったけど、まだまだ怖がってる人がいるって噂。……おしまい!」 「おお、怖かったぜ……ってお前な!」  僕の言葉に、さっくんがツッコミチョップを入れてきた。 「面白かったけど、それお前の作り話だろ!明らかに嘘だとわかる話じゃ意味ねーって俺言ったじゃん!嘘かどうかわからない嘘をついたやつが優勝だって言ったのに!」 「ご、ごめん」 「まあ、それはそれで面白かったけど!この公園がホラースポットだったらマジで怖いし」 「言えてる!」  あははははは、と嗤う子供達。うーん、と僕は煮え切らない気持ちになった。自分なりにいくつか嘘をついたつもりだが、どうやら誤解されて終わっている気がする。  嘘をつくのは、本当に難しい。よくよく考えたら、嘘でした!と言ってもみんながそれを信じてくれなかったら意味がないのだ。嘘を嘘だとわかってもらえて、それでも意外性のあるもの。――僕が本当の“西岡ライ”だったなら、素何か思いついただろうか。 ――やっぱり、都合よく成仏できました、って嘘が駄目なのかなあ。難しいなあ。  騒ぎながらぶんぶん目の前で振られるさっくんの腕。  美味しそうだなあ、と舌なめずりをしながら僕は思ったのだった。
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