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いっぱい、いっぱい。
エイプリルフール。
元々は英語圏の文化だったと聞いている。罪のないいたずらや嘘をついてもいい日、それが四月一日なのだという。ようは、みんなでジョークを楽しむ日、ということらしい。
起源がなんだったのかは、正直よくわかっていないのだそうな。海外の民俗学的な分析によれば、春の到来を祝うお祭りが始まりだったのだろうということで一応まとまってはいるとのこと。確かに、四月にもなれば気候も暖かくなるし、本格的に春がやってきたと認識する人は多いのではなかろうか。
なお、英語圏の人々の中にはこんなルールが盛り込まれていることもある。なんでも嘘は正午までと決められていて、午後には午前中についた嘘のネタ晴らしをしなければいけないらしい。でもって、午後に嘘をついてしまった場合は、「エイプリルフール!」と呼ばれて、愚か者扱いを受けてしまうのだとかなんとか。
日本には大正の頃にやってきた習慣とされていて、意外と歴史は古いのである。四月から学校などの学期が切り替わることもあり、日本にはなじみやすかったというのもあるのかもしれない。
それはさておき。
『明日はエイプリルフールだかんな!』
春休み。
僕のスマホに、近所に住む友達の“さっくん”からLINEが来た。
『明日みんなで集まった時に、みんな最低でも一つは面白い嘘をつくんだ!バレなかった奴が優勝な!』
さっくんは、僕が幼稚園の頃からの友達である。僕が住んでいるマンションのはす向かいの家で、お母さん同士も仲が良い。小学校では二年生の時以外同じクラスにはなれていないが、それでも休みの日は彼の合図で集まって一緒に遊ぶことが珍しくなかった。
僕もさっくんも今年の春から五年生。友達も同じくらいの年の子が多い。僕達は中学受験の予定はないが、仲間の中には親に受験するようにと言われて塾に入れられてしまっている子もいる。もうすぐそういう彼等は本格的に忙しくなるだろう。今のうちにみんなでたくさん遊んでおこう、という彼の魂胆はわからないことではなかった。
問題は。
――嘘って言われてもなあ。
僕は机の前で、頭を抱えたのだった。さっくん無茶振りは今に始まったことではないが、これはなかなか厄介な課題である。
人を傷つけるような嘘はいけない。それでいて、露骨な嘘だとわかるようなら面白くない。
何か、いいアイデアはないものだろうか。
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