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「今日は四月だけど、午後から大雪になるって天気予報で言ってたぜ!」
「私、もうすぐ結婚します!」
「宝くじが当たって、一億円で豪邸建てることになったあ!」
「ナオちゃん、もうすぐ転校するって……嘘だけど」
「そういう微妙に現実にありそうな嘘はだめ!NG!!」
「うわあああああああああああああああああああああああん!聞いてええええええええええええええええええええええええ!タコケンが結婚するってええええええええええええええええええええええええええええ!許せないから結婚式邪魔しにいきますいいよねえええええええええええええええええええええ!!」
「駄目えええええええええ!ていうか、え、まじ?」
「悲しいことに前半は嘘じゃないのおおおおおおおおおおお!」
「いやあああああああああああああああああ!」
「あ、ぼ、僕、彼女できた……」
「はい嘘」
「本当なのに!?」
「あ、本田。お前の背中のうしろに毛虫這ってるぞ!……嘘だけど!」
「ぶっ殺すぞ貴様あああああああああああああ!」
「ナカゾノケーキ店で全品九割引きセールがやるらしい!」
「星野紅茶で、小学生限定で特大ケーキが食べ放題になるんだって!」
「今年夏休みが三倍の長さになるって噂が!」
「夏休みの宿題が今年から消滅するって話が!!」
「学校にいる二宮金次郎像がリニューアルされて黄金になるらしい……」
「スノーマンのロケが明日駅に来るって話があるんですけど!」
「矢島さんのところに決闘の申し込みがあったらしいんだけど送ったの誰?……マジなんですけど」
「それは本当なの!?なんで!?」
みんなみんな、思い思いにしゃべりすぎて収集がつかなくなってしまった。春休み、エイプリルフールの午前。みんな一生懸命いっぱい嘘を考えてはきたのだろう。時々、本当らしき話が混じってるのがちょっと怖いが。
「ううむ、みんなもう少し斬新なネタ考えられないものかね?」
偉そうに腕組みをしているのがさっくんである。聖徳太子のように、全員のおしゃべりを聞き分けられたのだろうか。だとしたら大したものではあるが。
「そういうさっくんも何か考えてきたんだろうね?みんなに面白いもの言えっていうくらいなら、自分も言わないとダメだよ?」
「うぐっ」
「まさか、人のことは散々煽っておいて、自分は一つも思いつかなかったわけ?」
「そそそそそそしゅんなわけあるめえよ!」
「図星かよ!」
僕は彼の後頭部にチョップを入れた。なんとも調子のいい男である。
僕も一応、考えてはきたのだが、みんなの勢いに押されてさっきからあんまり喋れていない。それに、正直面白いかどうかがわからない。
そんな僕の空気に気付いたのか、さっくんが頭をさすりながら言った。
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