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昔の私へ
今、私は児童福祉士をしている。
小さい頃に助けてもらった場所へ帰ってきた。
昔と同じように、いや、もっとひどく感じるのは、今の子供達が裕福だと感じているからだろうか。
児童福祉施設にやってくる子供の数は昔から変わらない。
昔は貧困が主な原因だったように思う。
今は、虐待から判明して私たちが訪ねていくことが多い。
子供に手をあげる事が昔よりもハードルが低くなっているのか。
昔も親はよく子供をたたいていた。
誰も虐待だとは言わなかった。
けれど、その時のたたくは、何か理由があっての事である。
もちろん体罰はいつだって行けないのだけれど、今の様に、子供を死なせてしまったり、弱っていくのを楽しんだりというような体罰はなかったように思えるのだ。
実際に私はたしかにいつもおなかを空かせていたけれど、父親に叩かれたことはなかった。
兄は市役所勤めで福祉課にいる。
二人で力を合わせて解決した児童の問題もある。
私と兄は、あれきり見つからない、お金がなくてもなんとかお昼ご飯だけは作ってくれていた父を忘れられない。
あの頃の父に教えたい。
公的に頼って良い場所はある事。
父は男だったので、窓口で嫌なことを言われたことがあるのかもしれない。
それでも、真剣に訴えればその窓口の人じゃなくてもきっと誰かが聞いてくれる。
私たちの様に小さな子供がいるのだったら、子供支援センターというのもある。
きっとまだ、そういう機関がなかったのかもしれないけれど、今の子育てに困っている人たちには知ってほしい。
世界にはどうしようもなく貧しい国もあって、そういう国の子供たちはいつもおなかを空かせている。でも、ここは日本なのだ。
輸入に頼っているとはいえ、捨ててしまう食べ物が多すぎる国なのだ。
どうか、こどももおとなも、せめておなかが空いていない国にしてほしい。
お腹さえ一杯ならば、きっと明日への活路が見いだせるはずだから。
そして、そういう機関を頼ることを恥かしく思わないでほしい。
なぜかって?困っている人の為に作っている機関なのだから。
あなたにはその機関に相談する事情があるのだから。
どうか、どうか、一人で抱え込まないで。
あのコンビニの棚に手を伸ばしてパンを隠した私が、いつでもあなたに寄り添うから。
【了】
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