20-26

1/1
前へ
/396ページ
次へ

20-26

 俺達が手を上げてこっちですと声を掛けると、警察官2名が俺達の元に駆けつけた。そこで、通報者の早瀬が説明を始めた。友人の久弥と偶然この店で会ったら、知らない男と話しており、キーホルダー販売を持ちかけられていたのだと。そして、君ならタワマンに住めるだとか、月収56万円だとか言っていたと話していたのだと言った。そして、芸能人の知り合いがいると言って、羽音さんやディアドロップの佐久弥の写真を見せてきたのだと説明した。 「そうでしたか。あなたが男性とお話しされていた方ですね。お名前は?」 「佐伯久弥です」 「あれ?佐久弥さんの写真っていうことですが、ご本人じゃありませんか?」 「そうです。本人です。いつもこの姿でテレビに出ているんですけど、気がつかれませんでした……」 「ああーーー。何か被害は受けていませんか?」 「いえ。話を聞いていただけです。僕が店に入ったら、男が後からついてきて、僕の向かいに座ったんです。その後、お金儲けに興味が無いかと聞かれました。僕は返事をしなかったんですが、男が黒いバッグの中からキーホルダーを取りだして、説明を始めたんです。その後、友人が助けてくれました」 「そうでしたかーー。今、警察が男を追っています。……なんだって?見つけたのか?」  警察官がもう一人の警察官と話し始めた。すぐ近くで男が見つかって、職務質問をしているそうだ。そして、キーホルダー販売をしていた男かと聞くと、知らないと言っているという。しかし、銀色っぽい生地のジャケットを着た男だという。そして、俺達に外に出て、本人かどうか見てくれないかと言った。 「もちろんいいですよ。すみませーーん。少しの間、お店を出ても良いですか?」  早瀬が店の人に事情を話した。店員も男の特徴を聞かれて、俺達と同じことを言った。そして、カウンターに千円札を置いて出て行ったのだと説明した。俺達はケーキやナポリタンをテーブルに置いて、一旦外に出ることにした。  すると、石谷の看板のところで、男が警察官に囲まれていた。パトカーのサイレンも聞こえてきた。そして、警察官に、その男が話していた人かどうか聞かれた。 「その人ですか?」 「はい。間違いありません」 「そうですか。お手数ですが、署でお話を伺いたいのですが……」 「いいですよ。ナポリタンを食べてきますので、少し待っていて下さい。5分以内に戻ってきます……。ゆうちゃん、悠人、店に戻るぞ。会計がまだだろう。おごってやる」 「いいよーーー。こっちがおごるよ。大変だったんだろーー」  警察官が俺達の後ろを付いてきた。そして、店の中に入って、出入り口のところに立った。写真を撮るという。店の人は協力的である。こういうことが多いのだろうか。駅での暴行事件もあったし、物騒な世の中である。  俺達はそれぞれ食べ終えて、早瀬が3名分の会計を済まし、ローザーさん達に挨拶した。さすがに驚いていた。また会いましょうと手を振り、店を出て、久弥がマネージャーの蓮司さんと電話で話しながら、パトカーに乗った。そして、警察署に向かった。  本当は交番で話をするか、さっきの看板のところで解散のようだが、久弥だと分かって狙ってきた可能性もあるということで、警察署に行くそうだ。そして、久弥が俺のことをバンドメンバーなのだと説明し、俺もマネージャーに連絡した。すぐに駆けつけるという。  パトカーに乗るのは初めてである。そして、警察署に向かう道中で、どんな話を聞いたのか詳しく聞かれた。俺達は覚えているうちにと思って、あれこれと話した。そして、どうして渋谷に来たのかと聞かれて、恥ずかしくなった。そして、占いの店・マーリンに行くためだったのだと説明し、ああ、そうでしたかと納得されて、ホッとした。
/396ページ

最初のコメントを投稿しよう!

74人が本棚に入れています
本棚に追加