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「今日も美味しいよ。彼女も喜んでるみたいだしね!」
友人から勝手に彼女の味の評価を言われて、つい彼女はむせそうになる。
「別に、あたしは」「見てればわかるよ。美味しそうな顔だから」
どうにか文句を言おうと思った彼女だけど、言葉が見つからなくて困った瞬間に彼が返答していた。
彼女はごはんを食べているとき、会社でこれまで見せたことのないくらいの笑顔になっている。
「お願いが有るんだ。貴方だけの特別なメニューを用意する。だけど、それは僕の恋人になってくれるならふるまうよ。僕の実家の食堂で待ってるから」
彼は見たこともない真剣な顔をしていた。それに一番リアクションしたのは言うまでもない、友人だ。
「キャー、ちょいちょいちょい。どーすんの?」
その言葉を聞いてないみたいに話し終えた彼の背姿を見送って彼女は黙ってる。
その日、午後の仕事なんて彼女は全く手につかない。まあ、それは気になっている友人もそうだったのだが。
こうなると時間が直ぐに過ぎて友人は定時にダッシュで彼女のもとに現れる。
息を切らして「覚悟はできたの?」と聞いてきたが「約束の時間まではまだあるよ」と当然彼も仕事だったので指定された時間は二時間後になっている。
慌てそのことを忘れていた友人は落胆して「暇だなー」とラウンジから外を眺め始めた。
彼女はまだ仕事を続けようとしたが、いかんせん手につかない。責任はあの彼にあるんだろう。そのことは重々と理解している。
若干仕事のデスクに居るのが馬鹿らしくなったので友人の元に向かったのは一時間は悩んでから。
待っていたかのように「お店、教えとかないとね」と友人は自分のスマホに彼の実家のネット評価を出して「方向音痴だからナビも設定しとくよ」と彼女の携帯まで取り上げる。
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