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柚木の木と聖女たちの祝福(side フェンリル)
上空から見ていたが、ラヴィーネたちが神殿の艮の方位に神域ユズの苗を植えていた。
柚子の木にはトゲがある。
『幸福』『嬉しい知らせ』『汚れなき人』などの花言葉もある柚子だ。
艮の方角にトゲトゲしたものを植えると邪気の侵入を防ぎ魔除けになるという言い伝えともピッタリだな。
ギルベルトたちとの連絡には、伝書鳩魔法による報告の手紙だけでなく、返信用の魔法術式も共に転送しておいた。
ギルベルトたちならば伝書鳩魔法も使用できるとは思うが、一応な。
返事は、わりとすぐに届いた。
彼らが生存を願っていた探し人で合っていたようだな。
このまま彼らを保護し、関係各所へ連絡がつくまでは、ロゼちゃんの屋敷で過ごし休養してもらいつつ、この十数年間での変化に少しずつ慣れてもらうといった内容だった。
「不安もあるだろうが、ゆっくりと慣れて行けばいい。オレたちもしばらくは同じ屋敷で世話になっているから顔をあわせる機会も多いだろう」
護衛は全員が聖騎士。
成り行きでオレたちが神獣だと知られてしまったが、表向き内緒にしていることは伝えておいた。
グレイシアの街では門番たちにも正体がバレているだろうが、表向きオレもラヴィーネも一応獣人だ。
聖女の護衛ということもあって女性の騎士も数名いる。
グレイシアの街に戻ったら、領主の娘であるリッカか冒険者ギルドで女性の冒険者にでも相談してみるか。
浄化魔法で衣服の汚れも落とせるとはいえ、鎧や神官や聖女の正装のまま過ごすのも目立つ。
リヒト達には、エンシェントドラゴンの幼龍たちと共に馬車に乗ってもらい、ギルベルトたちから場所を空けておくからと指定されたグレイシアの街の門の近くへと転移した。
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