神と神獣と転生(side フェンリル)

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 オレの巫女。  いや、ラヴィーネ。  目覚めたキミが、自分のことを『ボク』と言っていたのは、ユキノだった頃と同じだな。  若い娘が旅をしていると人拐いに目をつけられやすい。  だから男装して性別を偽り、オレと共に旅をしていた。 「ラヴィ」  声に出し紡いだ名は、自分自身への戒め。  ここにいるのは、オレの巫女ユキノじゃない。  転生体だとしても、彼女はユキノじゃなくてラヴィーネなのだと、重ねて見るなんて失礼なことをしてしまわないよう、心の中で自分自身に言い聞かせる。  守りきれなくてごめん。  転生してオレと共に生きることを選んでくれてありがとう。  ふわふわとやわらかいラヴィーネの毛並みを撫でる手に密かな想いを乗せて、声には出さず、心の中でそっと呟く。  あんな思いは、二度とごめんだ。  ラヴィーネ、今度こそ、オレがキミを守り抜くから。
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