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神と神獣と転生(side フェンリル)
ラヴィーネ、キミの存在そのものが奇跡なのだと言ったら、キミは驚くだろうか?
かつてのオレは、神の怒りの代行者だった。
戦争を引き起こした国に赴き、人間たちに神の警告を伝え、それを無視して戦争を続けるようならば、時に地割れを引き起こし、時に雷を落とし、時に吹雪を操って……国そのものを滅ぼし歴史を終わらせる。
神の眷属である神獣は、オレに限らずそういう役目を担っていた。
厄災の獣。
戦争を引き起こした国の人間たちは、自分たちの行為を棚に上げてオレたちをそう呼び、畏怖し、討伐しようとしていた時代さえあったな。
それでも、オレたちの本質を理解してくれていた人間たちもいたから、そんな人間たちの暮らす場所が自分勝手な連中に侵略されてしまわないよう大地を分断し、地形を変えて……。
神獣を『厄災の獣』などと呼び、貶めた人間たちの国は、神の怒りに触れて海の底へと沈んだ。
オレたち神獣は、そもそも人間が戦争などを引き起こさなければ、生命の営みを見守る土地の守護獣。
海を豊かにし、森を育み、時には自然災害から人々を守り、荒れた地の復興を手伝う、そういう存在。
海に沈んだ国を人間たちは戒めとし、いつしか神殿や祠ができ、神やオレたち神獣にも祈りを捧げてくれる神官や巫女が現れ、代々神殿や祠の管理を行う傍らで、オレたち神獣の声を聞き、人間たちに平和の大切さと命の尊さを解くようになった。
けれど平穏な日々は、海に沈んだ侵略国家の復活を目論む邪神教が召喚した人間の姿をしたナニカによって崩されたんだ。
異世界から召喚されたナニカが、神格を剥奪された堕ち神であるということ、この世界の神に接触する足掛かりとして神獣の力を奪おうとしていること……邪神教の動きを追ううちに判明していく内容から、オレたち神獣自身も警戒はしていた。
だが、放たれた呪いの影響で、仲間の神獣たちは、それぞれの地に封印されてしまったんだ。
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