104人が本棚に入れています
本棚に追加
神はラヴィーネに、このあたりのことを『神に恋した異世界の神が眷属の神獣に嫉妬して呪いをかけた』なんて説明をしていたようだが。
仲間の神獣たちが封印される中、オレがかろうじて無事だったのは、オレに仕えていた巫女が、浄化に特化した力の持ち主だったから。
彼女と一緒に堕ち神を滅したつもりが、最後の最後で思わぬ反撃を受け……オレの呪いに巻き込んでしまい、巫女だった彼女も命を落とした。
悔やんでも悔やみきれなくて、魂の深部にオレとしての意識が封印されていくのを感じながら、せめて彼女の魂が無事に転生できるよう、薄れ行く意識の中で願った。
神獣としての力を失い、異世界にただの犬として転生していたオレの意識が浮上したのは、神にラヴィーネという名を与えられ眷属入りしたあの子と出会った時。
オレの巫女。
異世界にウサギとして転生していたとは思わなかったけれど。
しかも、あんな飼い主のところになど……。
オレが受けた呪いの影響で、転生後の彼女の運命を狂わせてしまったことがやるせなくて、人間に飼われている獣ができる範囲で彼女へと寄り添い続けたが、それもまずかったらしい。
あの男は、飼い主であるはずのあの男よりウサギを構いはじめたオレにも、あの男に怯えるばかりで懐かないウサギにも苛立ちが募っていたようで、やがて飼育放棄気味となり、冷たい雨が降る日に彼女を捨てた。
彼女がいなくなれば、オレが再び飼い主に構ってほしくて媚びを売るとでも思ったか?
ふざけるな。
貴様など、生き物を飼う資格もない!
彼女は、オレの巫女だ。
オレが本来守らなければならない世界を命を懸けて救った救世主なんだぞ。
それを貴様はっ……。
低く唸り、飼い主だった男に牙を剥いて、男が驚き、オレに怯えて腰を抜かして動けなくなっているのを幸いと、開いていた玄関から脱走して彼女の行方を追った。
最初のコメントを投稿しよう!