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落雷をこの身に受けたことによる熱や痛みは、不思議と無かった。
雷がオレたちがいる場所に落ちたところを目撃してしまった人間たちには、悪いことをしてしまったな。
だけど、オレたちは最後に地球の人間にも優しい者がいるのだと知ることができた。
人々のぬくもりに包まれて逝くことができたことは、不幸中の幸いというやつだろう。
地球に転生させられていたオレたちが人間への憎しみを抱いてしまっていたならば、邪神教の連中の思惑通りになっていたのだから。
魂だけの状態になってしまったけれど、神と再会して、オレの巫女だった彼女の魂が神の管理する空間で回復するのを待つあいだに、オレは一足先に神に肉体を再構築してもらい、かつて過ごした剣と魔法の世界へと降り立った。
かつてのオレが守っていた地。
神域の草原。
終わりとはじまりの大地。
入り口となっているのは、オレの巫女が管理していた祠。
そしてその祠からは、神とオレたち神獣を祀る神殿が見える。
神域は、変わらずここに在った。
祠から見える景色は、かなり変わったように思う。
この地で暮らす人間が増えたというのならば、それはきっといいことだ。
戦争や自然災害や疫病などで命を落とした者が少なかったということだろうから。
神の声が頭に響き、ラヴィーネの眷属化が完了し、肉体再構築の段階に入ったと告げられ、急いで元の場所へと戻る。
オレの到着に合わせ、淡い光に包まれ転送されてきた彼女の再構築された肉体をそっと受け取る。
あたたかい。
ちゃんと、生きている。
近くにあった木に背を預けて、純白の毛並みのウサギをそっと抱えたまま、その場にゆっくりと腰をおろした。
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