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僕の通う小学校は、少子化と都市型過疎化の影響で、クラスは一学年に一つしかない。
人数も二十だけで、仲の良し悪しはあってもみんなクラスメイト。顔も名前も知っている間柄だ。
六年間、その仲間と一緒に過ごし、今日はついに卒業式。
一人一人名前を呼ばれ、卒業証書を渡される。
その中に、知らない子が混ざっていた。
「あれ、誰?」
ひそひそとみんなでささやき合うが、その子が何者なのかを知っているクラスメイトは誰もいない。
やがて、卒業証書の授与が終わり、僕達は全員席に着いた。
みんなそれとなく周囲を見回すけれど、どこにもさっきのあの子はいない。
座席の数も、一年からずっと同じ二十席だ。
気のせいだったのかな。不思議に思いながらも、進んでいく式にいつしか意識は向き、やがて誰もさっきのあの子を気にしなくなった。
たった二十人しかいないので、卒業式は程なく終わり、僕達は小学校を卒業した。
中学は、違う学校に通う子がいるし、同じ中学に行ってもクラスが一緒になるとは限らないから、これからはみんなバラバラだ。
十年とか経った頃には同窓会とかをするかもしれないけれど、この顔ぶれで集うのは今日が最後。
なんとなく切ない気持ちが募ったけれど、いつまでもその場にはいられないから、誰からともなく僕達は学校の外へと歩き出した。
校門を出て、一人、あるいは何人かずつで自宅の方向に向かう。その時誰かが僕に話しかけた。
「中学も一緒だね。これからもよろしく」
来たいことのない声。それに驚いてすぐさま振り向いたけれど、そこには誰もいなかった。
気のせいじゃなかった。顔も名前も知らないけれど、もう一人、僕達と一緒に卒業した子は確かにいた。そして、どうやらその子は僕と同じ中学に行くらしい。
念願のマイホームを購入し、この春から、僕の家族はそこへ移り住むことになった。
場所は同じ市内だけれど、ここからはかなり離れている。だから僕は今の学区の中学ではなく、引っ越し先の近くの中学に通うことになっている。
そこへあの子が通う?
もしかしてあのことは、中学で改めて会うのかな? それとも、対面することはないけれど、ただ僕についてくる…?
六年一緒だったみんなと別れ、一人、誰も知り合いのいない中学へ通う僕。
元々期待より不安の方が大きかったけれど、今日のこの件で、中学生活がますます不安だらけになった。
卒業式…完
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