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冥婚
『曰くつきなんだぜ。赤い封筒は』
「えェ……、曰くつき。マジか?」
『そうだよ。赤い封筒を拾うと、それを隠れて監視していた遺族が拾った人を捕まえて、無理やり亡くなった人と結婚させるらしいんだ』
「え、亡くなった人と結婚……?」なんだ。それは。
『ああァ、赤い封筒には写真や形見の髪の毛なんかが入っているらしいんだ』
「そ、そうか。ボクが拾った封筒には写真が入っていたよ」
『ふぅん、それで捕まえた人と結婚させるのを『冥婚』って言うらしいぜ』
「ン、めいこんって。迷うの迷婚か?」
『いや、冥途とか冥界の冥だよ』
「ううゥッ、それで『冥婚』か」
『もしかして、その彼女、死者かもしれないぜ。ケッケケ』
気色悪い笑い方をした。
「あのなァよせよ。おかしな笑い方をするのは。オカルトじゃァあるまいし。じゃァな」
ボクは霊感がないので、そんな都市伝説など信じない。
しかし電話を切ると急に不安になった。
試しに彼女の名前をネットでサーチしてみた。
取り敢えず、『南波アイ』では出て来なかった。
だが『南原愛莉』というアイドルがヒットした。
「ン、南原愛莉か……」
四年前、地下アイドルだった南原愛莉は執拗なストーカーに襲われ瀕死の重態になり、意識不明で三日前に亡くなったそうだ。
三日前といえば、赤い封筒がボクの家のエントランスに落ちていた日だ。
まさかとは思うが。
ボクはもう少し詳しく調べようとした。
しかしその時、不意に背後から声が聞こえた。
「ケント」
「えェ……?」ボクが振り返ると南波アイが立っていた。
いつの間にか、背後にアイがいた。
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