赤い封筒

1/1
前へ
/14ページ
次へ

赤い封筒

「カレ、さっき赤い封筒を拾ったでしょ?」  少し(いぶか)しげな顔でボクに尋ねてきた。大きな瞳でボクを見つめた。疑うような眼差(まなざ)しだ。 「えェッ、赤い封筒ですか?」  ボクは思わずドキドキしてしまった。  どうしよう。確かにさっき赤い封筒を拾ったのだが。 「あれ、私のだから返してよ」  手をボクの目の前に差し出した。 「えェッ?」突然の申し出にビックリした。  そういえば封筒の中に入っていた写真の子にそっくりだ。やはりあの赤い封筒は彼女のモノなのだろうか。 「はァ、あの赤い封筒ならリビングの方に置いてありますけど」  ボクは愛想よく低姿勢で応えた。 「そう、じゃァ遠慮なく上がらせてもらうわ」  すぐに彼女は玄関へ入って靴を脱ぎ、なんの奇譚もなくボクの部屋へ上がり込んだ。 「はァ、あ、あのォ、どうぞ……」  ボクは彼女の勢いに押され、まったく抵抗できない。だいたいボクは普段から気の強い美少女には弱い。 「こっち?」彼女はアゴで指示し、遠慮なくリビングへ入っていった。 「ハイ、そうですけど……」  ボクは彼女の後ろからくっついていくしかない。 「ああァ、この赤い封筒ね」  リビングへ入ると彼女はソファに腰をおろし、テーブルの上の赤い封筒を指差した。 「ええ、そうです。それですね」  ボクも苦笑してうなずくしかない。 「フフゥン」  彼女は鼻歌を歌いながら封筒を手にした。 「あれェ、お金は?」  サッと封筒の中身を確かめてボクに訊いてきた。 「え、お金ですか。いやァ別に、その写真以外入ってませんけど」 「えェッウソォ。この封筒に全財産を入れておいたのよ」  彼女はボクを疑うように睨んだ。 「マ、マジですか。全財産を?」 「そうよ。五百万円入ってたの」 「ご、五百万円もですかァ?」  
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加