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駄々っ子のようだ
取り敢えずこれ以上、この子に駄々をこねられても困ってしまう。
ましてやあらぬ疑いを掛けられて警察沙汰にされるなど論外だ。
ボクはキッチンで有り合わせの食材を使い料理を始めた。
「ええェっと、玉子は好きですか?」
「フフゥン、嫌いじゃないわ」
「それは良かった」
まずは玉子を割って、フライパンに油を引きコンロで加熱した。玉子焼きなら数分でできるだろう。ウインナーも一緒に炒めた。これなら時間も掛からないはずだ。
だが美少女は我慢できないのか。
「もォ早くしなさいよ。遅い子はキライよ」
後ろからボクを急がせた。まるで口うるさい姑のようだ。
「いやァ、そんなに急かさないで。今すぐ作りますから」
言っておくがボクは彼女の専属のコックではない。
「早く早くゥ」まるで駄々っ子のようだ。
「わかりました。じゃァサラダを先に食べていてください」
先に野菜をまな板にのせ手早く切って皿に盛った。そこへツナの缶詰を乗せマヨネーズを掛けて完成だ。いつもなら、あとで食器を洗うのが面倒なのでツナの缶詰に直接マヨネーズを掛けている。
だが女子が食べるので少しは見た目を良くしようと皿へ盛りつけた。
「ふぅん、ねえェこのツナ、マグロ?」
「ええェ、まァそうですよ」
たぶんマグロだと思う。缶詰を確かめてみた。
「カツオのツナは好きじゃないのねえェ」
「そうですか。これ食べて少し我慢してください」
まったくボクひとりに料理させておいてぜい沢を言う美少女だ。
あとは玉子焼きとウインナーをフライパンで炒め、コーンスープを作って彼女の前に差し出した。
「わァ、サンキュ。いただきマンゴー」
美少女はとんでもない掛け声で食べ始めた。
「はァどうぞ。召し上がれ」
「フフゥン、美味しい!」
美少女は満面の笑みを浮かべた。ニコニコするとアイドルのように可愛らしい。
「そうですか。それは良かった」
作った甲斐があるものだ。
「そういえば名前を聞いてなかったわね」
美少女はボクに名前を尋ねた。
「え、ボクですか。ボクは倉明ケントです」
「えェ、クラーク・ケント。どっかで聞いた名前ねェ?」
「いやァ、倉に明るいと書いて倉明です。名前のケントって呼んでいいですよ」
テーブルの上のメモ用紙に『倉明ケント』と書いた。
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