桜空

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それから数時間後ーー。 藤堂さんに連れて行かれたのはショッピングモール内にある水族館だった。チケット売り場の前は桜並木になっていて深い緑色の葉が風にそよそよと揺れていた。 「桜の咲く時期にもう一回来ようか?」 「あ、は、はい」 ぼぉっとして眺めていたら藤堂さんに困ったように苦笑いをされてしまった。 「すみません。水族館に来るの中学校以来なので……」 「いちいち謝らなくてもいいよ。桜空くんにどうしてもお礼がしたかったんだ。風邪をひいて寝込んでいた時看病してくれてありがとう」 「なんでその事を……」 婚約者がいる藤堂さんに迷惑を掛けちゃいけない。そう思って藤堂さんが目を覚ます前にマンションを出たのに。まさか気付かれていたなんて。驚いて声も出ない僕の手を藤堂さんの大きな手がそっと包み込んだ。 「熱でうなされて朦朧としていたのは確かだけど桜空くんが側にいることは気付いていた。きみが作ってくれたお粥、涙がでるくらい美味しくて。すごく嬉しかった。唯花は料理をしないから。桜空くん、行こうか?」 チケットを二枚購入し係員に見せてから水族館に入った。館内は冷房ががんがん効いてて寒いくらいだった。
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