桜空

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それから数日後。 「いらっしゃいませ。お冷とおしぼりはドリンクバーにございますので」 男性客を席に案内し軽く会釈して立ち去ろとしたら、 「あなたが半谷(はんがい)桜空(さく)さん、ですね?」 フルネームで名前を呼ばれたからどきっとした。 「私、藤堂の秘書をしています。桐島と申します」 名刺を差し出されおっかなびっくり受け取った。 「実を申しますと藤堂が風邪をひいて寝込んでいまして。熱が下がらないんです。桜空さんに看病をお願いしたいなと。こんなことを頼めるのはあなたしかいない。そう思いましてね」 「許嫁さんは?」 「友だちと旅行に行くからと断られました。それにただの風邪ならいいけどインフルエンザとかうつされたら嫌だとはっきり言われまして。私も泊まりの出張でこれから福岡に行かなければならないんです。一人副社長を自宅に残しておくのが心配でして」 「そうですか。分かりました。僕でお役に立てるなら喜んでお引き受けします」 「あなたならそう仰ると信じていました。ありがとうございます」 これで少しは藤堂さんにお礼が出来るんじゃないか。僕も嬉しかった。
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