桜空

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藤堂さんが心配で朝まで結局一睡も出来なかった。清掃の仕事、今日休みで良かった。ファミリーレストランのバイトは十一時からだから、それまでは一緒にいれる。熱がだいぶ下がったのか昨夜とはうって変わって穏やかな寝息を立てて眠る藤堂さん。寝ている顔もかっこよくてついつい見惚れてしまう。何時間も見ているのに全然飽きなかった。 あ、そうだ。お粥を作ってあげよう。 藤堂さん台所をお借りします。立ち上がろうとしたらピンポンとチャイムが鳴った。 誰だろう、こんな遅く。おそるおそるインターホンに近付くと誰もいなかった。気のせいだったのかなとも思ったけど、その直後、黒いフードを目深く被った人影が目の前をすっと横切った。恐怖で声も出せずしばらく動けなかった。 足元に紙が何枚も落ちていることに気付いておっかなびっくり拾い上げると、命が惜しいなら藤堂に関わるな。と書かれてあった。深夜にファックスが送られてきたみたいだった。悪戯にしては手が込んでいた。 ちょうどその時携帯が鳴ったから心臓が止まるんじゃないかそのくらい驚いた。 ー肝心なことをお伝えするのを忘れていました。実はストーカー行為に悩まされていまして。警察に相談していますー 電話を掛けてきたのは桐島さんだった。
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