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「桜空くん帰るよ」
厨房から出てきた美紀さんに腕を掴まれお店の外に出た。
「枡さん大丈夫かな?僕が名乗り出れば枡さんに迷惑を掛けずに済んだのに……」
「桜空くんは優しいんだね」
桐島さんが運転する車が駐車場に入って来たことにまったく気付かなかった。
「藤堂さんだっけ?彼と付き合うの、本当に止めたほうがいいよ。命が惜しいなら」
「藤堂さんとはそんな関係じゃありません」
「今は、でしょ?桜空にその気がなくても彼はどうかな?藤堂さんに優しくしてもらったのかも知れないけど、見た目で判断しちゃダメ。下心を持った悪い大人は幾らでもいるからね」
美紀さんが険しい表情を浮かべた。
「桜空、良かった無事で……」
車が目の前で停まり後部座席から藤堂さんが慌てた様子で下りてきたから心臓が止まるんじゃないか、そのくらい驚いた。
「副社長」
助手席の窓が開いて運転手席から桐島さんの鋭い声が飛んできた。
「そうだよね。唯花のほうを優先しないと、だよね。分かっているよ、言われなくても」
桐島さんに睨まれて、寂しそうに口にするとお店の中にすごすごと入っていった。
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