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「唯花が迷惑を掛けみたいで申し訳なく思っているよ」
力なく項垂れて謝罪の言葉を口にする藤堂さん。升さんにかなりきつく言われたみたいで元気がなかった。
「でもこれで良かったのではないですか?唯花さんとの結婚を白紙に戻せるのではないですか?」
桐島さんが飲み物をコンビニエンスストアから買ってきてくれた。
「そう簡単にはいかない。唯花の父はうちの会社の大株主だ。アクティビスト、つまり物言う株主だ。父も彼には逆らうことが出来ない。世間体を考えて唯花との結婚を強引に押し進めるはずだ」
「愛していない人と、ですか?」
桐島さんの言葉にはっとする藤堂さん。
「……仕方ないよ」
か細い声で口にすると深くため息をついた。
「あ、あの……送っていただきありがとうございます」
藤堂さんと一緒にいてはだめだと本能的に感じて、ペコリと頭を下げてその場から立ち去ろうとしたら、
「桜空、行きたいところがあるんだ。もう少しだけ付き合ってほしい。無理にとは言わないけど」
藤堂さんに腕を掴まれ引き戻された。
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