帰って来た兄

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 ここは、いわゆるパラレル世界の日本の鎌倉時代初期。  偉大なる初代鎌倉殿源頼朝が亡くなり、二代目鎌倉殿はその嫡男である頼家が継いだ。  頼朝の時代とは違って、もはや大きな戦は起こらなくなり、武勇を誇る坂東武者たちのための武家政権とはいえ、まつりごとは必然的に文官たちをはじめとする官僚組織を中心とした文治主義に移行しつつあった。  そんな中、冒険心と好奇心旺盛な若い頼家は、宋との交易により関東を活性化しようとある計画を遂行し、それがもうじき完成しようとしていた。  和賀江島。それは、由比ガ浦の東に浮かぶ、整備された人工の港だ。そこには、若い鎌倉殿の大号令で作られた大船が浮かんでいた。 「すごい、大きな船だなあ。私もいつか船に乗って宋の国へ行ってみたいなあ」 「千幡は、船で宋に渡って何をするのだ?」  千幡は、にこにこしながら兄の問いに答えた。 「まつりごとは鎌倉殿の兄上がいらっしゃるから安泰です。だから、私は、いっぱい勉強して立派なお坊様になるために、宋の国へ行くんです。宋だけじゃありません。宋よりももっと西の天竺にだって行きたいです!」
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