たそがれ

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出会い 最近定年退職した。仕事人間だったから趣味もないし、たまにジムに行くことぐらいだ。あとは空っぽの自分がぼーとして家でゴロゴロしているだけだ。ジムも若い職場だったから若造りのために通っていただけだから、そろそろやめようかなと思っている。自分で言うのもなんだが結構歳の割りには筋肉質のいい身体しているよ!仕事人間で家を顧みなかったから女房と娘は出て行った。只今独り身だ、たまに娘が心配だからと様子を見に来る。 気晴らしに散歩をしていると美術館の前を通りかかったら何か展示しているようだったので暇だし見てみようと思い中に入った。若い画家達の絵が展示されていた。今の自分を現しているような空虚な絵が目に入った。その絵の前でたたずんでいると後ろから男に声をかけられた。 若さの眩しい爽やかな青年だ。 「その絵僕が書いたんですよ!見てくださってありがとうございます。何か感想がありましたら聞かせてくださいますか?」 笑顔が可愛らしくてみとれてしまった。 「何か感想ありますか?」 「あ、空虚な絵で空っぽな今の自分を現しているようでつい見入ってしまいました。」 「そうなんですよ!これは空っぽな心を表しているんですよ、わかってくださる方がいてとても嬉しいです」
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