17人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
月影先輩は、楽しそうに僕を見た。
「君の顏、よく覚えとく。もし梅華高校に入学することにあったら、今日の件についてゆっくり話し合おうね」
月影さんが、歩き出した。五人の生徒もあわてて後を追う。
僕、ずっと彼女のことを見ていた。彼女は気づいていたみたい。一度、僕のほうを振り返った。でもなにも言わなかった。
もう一人、彼女を見送っている男の人がいた。
まだ花が開いていない桜の木にもたれていた。グレーのスーツを着こみ、紺のネクタイがブラブラ風に揺れていた。先生が声をかける。
「松山さんじゃありませんか!」
「村田先生。この前はどうも」
「警察の方に、あまり学校に来てもらうのは……」
「村田先生。違法な盗撮画像サイトの運営者が逮捕された事件を知ってますね。ずいぶん稼いだようです。今、この事件を扱っています。」
「はあ、そうですか? 新聞に載ってましたね」
「このサイトでは、盗撮された女性の顔写真も一緒に掲載されている。だが顔のぼかしを消そうとすれば、運営に払う金が雪だるま式に増えていく。実に巧妙なシステムです。あなたもそう思うでしょう」
「そうですか? だがこの学校とは何も関係ないでしょう」
「あなたがそうおっしゃるとはサプライズですね。桜花高校の生徒の中に、盗撮画像をサイトに売った恥ずべき人間がいる。今さら、あなたも『知らない』では済みませんよ」
村田先生の表情が一瞬で硬直する。松山と呼ばれた男の人は笑顔を浮かべた。でもその人の目はひどく冷たく、少しも笑ってなんかいなかった。上から目線の態度が全身に漂っていた。
「JKマフィアの月影サキか。ここにはまた来ることになるでしょう。あなたには残念ですがね」
松山さんはそう言い残し、村田先生の前から立ち去った。
月影先輩の姿は、もう僕の前から消えていた。
ものすごくこわい月影サキ先輩。でもこれで先輩と別れたくはない。心から僕はそう思った。
最初のコメントを投稿しよう!