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このままでは先輩を助けられない
駅前警察署の玄関に向かったときだった。玄関前に立っていた制服警官が、僕を見てハッとした顔をした。
僕は一礼して玄関前の階段を上がろうとした。警官がすまなそうに僕に話しかけてきた。
「申し訳ないが、中に入ることは出来ません」
驚くような言葉だった。
「本庁の松山さんがいると思います。僕、松山さんに大切な用事があって来ました」
「あなたを警察署に入れないように指示が出ているのです。どうぞ、お帰りください」
「お願いです。一刻を争うんです」
「あなたの気持ちは分かりますが、指示が出ている以上、中に入れることは出来ないのです」
三人の警官が奥から駆けつけ、並んで僕の前に立ちふさがった。
「すみません。『盗撮画像サイト事件』についての話なんです。松山さんを呼んでください」
「それは出来ません」
「どうして入れないんですか? どうしてそんな指示が出ているんですか?教えてください」
僕の問いに、警官たちは無言だった。
「日下くん、入って」
聞き覚えのある声。文さんが警官をかきわけて、僕の前に現れた。
「松山さんを呼んでくるから」
「白木刑事、それでは」
「この少年は真面目でいい子だから、絶対にそんなことはしない。だけどその気になれば、すぐにあなたたち処分されるからね」
警官たちが顔を見合わせる。
「そ、そんな」
「ま、待ってください」
「私たちは正式に命令を受けて……!」
「その指示はたった今、私が撤回しました。さあ、日下くん、行こう」
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