24人が本棚に入れています
本棚に追加
松山さんは話を聞いてくれない
文さんは、昨日、松山さんたちと話をした部屋に案内してくれた。部屋に行く途中で、また缶コーヒーを買ってくれた。
僕を椅子に座らせると、
「ちょっと待っててね。松山さんを呼んでくるから」
文さんは部屋を出て行ったが、すぐに戻って来た。ドアが開くと、松山さんがイライラした口調で文さんを怒鳴りつけた。
「白木文刑事。君の行動は処分の対象になることを知らないといけない。なぜ彼を警察署に入れた」
「話を聞いてあげてもいいじゃありませんか?」
「この少年の行動を、家族や親戚が喜んでいるとは思わないね。僕は火中の栗を拾うつもりはない。分かるかね。僕は次期警視だ」
「だったらきちんと話を聞く義務があるんじゃないですか?」
「上司に反抗か? 僕は次期警視だ。未来の警視総監に向かって、あまりいい選択とはいえないな」
松山さんが、冷たい目で僕を見下ろしてきた。
「日下くん。今の話を聞いて聡明な君なら、僕がどうするか見当はついただろう。君に会うことも話を聞くことも出来ない。白木刑事が君を玄関まで送ってくれる。白木文刑事。さっさと彼を連れて行きたまえ。いずれ君は規律違反について査問を受けることになる。」
ああ、もうどうしようもない。松山さんが話を聞いてくれなければ、先輩を助けることなんかもう出来ない。
知らないうちに、涙が浮かんできた。
そんなの絶対イヤだ。サキ先輩にもう会えなくなるなんて……。
でも僕って、どうしたらいいのかしら?
最初のコメントを投稿しよう!