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意外な助っ人
突然、松山さんの電話が鳴った。スマホの画面を見た松山さんが、顔色を変えて部屋を出て行った。
一体誰だろう? 文さんと僕は顔を見合わせた。ドアごしに、松山さんの小声が聞こえてくる。何を話しているのかは分からない。
突然、松山さんの小声が、部屋まで聞こえる大声に変わった。
「いえ、そんなことは決して……。あの、日下先輩。そういじめないでください。ちゃんと彼から話を聞きますから」
松山さんの恐縮した声。お母さんだ。すみません、ありがとうございます。
ここへ来る前に聞いた母からのエールを思い出す。
「ええーっ、吉村先生。は、初めまして。わたくし、松山洋介でございます。いえ、先生は私どもの手本です。私のような浅学菲才の小物は、到底、吉村先生に敵うことはありません。心からの私の思いでございます。いえ、そのようなことは決して……」
文さんがパッと部屋のドアを開けた。松山さんったら、手にしたスマホに向かって、何度もお辞儀をしていた。
文さんや僕を見ると、超きまずい表情を見せた。
「はい……。この松山洋介、心より日下くんの意見を拝聴させて頂きます」
お祖父さんまで僕のために……。お祖父さん、本当にありがとうござます。
松山さんが緊張した顔で戻ってくる。机に向かって座ると、言葉を選びながら慎重に話しかけてみた。
「と、とにかく、日下くんの貴重なご意見をお聞かせください」
ここからが勝負だ。きっと僕、サキ先輩を助けてみせる。お母さん、お祖父さん。そして天国のお父さん、どうか見守っていてください。
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