2人が本棚に入れています
本棚に追加
おなかが、すいた。
一日の間に何度この言葉を頭に思い浮かべているだろう。
高層ビルのおかげで小さくなった、幾何学的な青い空を見上げてみる。
人々はそれぞれの働く場所へと向かっている。
人にぶつからないように、私は視線をすぐに前へと戻した。
通勤の道のりを、私は嫌いじゃない。
自分のバイタルサインを確認しながら走る人、時間を気にして腕時計を見る人、冷たい風にコートの襟を立てる人。
いろんな人がこの街を行きかっている。
私もそんな人たちの間を歩き進む。
車は相変わらず多い。
車の中で何かを食べている人がいた。
何かを、おそらくテイクアウトのコーヒーを、飲んでいる人も。
私はまだ、おなかはすいていない。
いつもの様にフルーツをたっぷり食べてきたから。
朝の冷たい空気が心地いい。
ああ、そうだ、今日はジェイクにレポートを提出するのを忘れないように。
先月のパーティーで、私は少し酔い過ぎていたことを思い出す。
あやまった方が良いかしら?
あの時、ジェイクはおなかをすかせていて、飲むよりも食べる方に専念していた。
地下鉄の駅から地上に出てきた人が、人にぶつかりそうになった。
お互いに手をあげて、挨拶をして離れていく。
今日は良い日かもしれない。
潮風を浴びたい気分だ。
明日は海沿いの道を歩いてみよう、カモメに気を付けながら。
今日はジェイクをランチに誘ってみようか?
頭の中にそんなアイデアが浮かんだ。
彼の顔を思い浮かべると、どうしてだか同時に、次々と美味しい料理の画像が浮かんできた。
今はおなかはすいていないけれど、きっとデスクに付く頃には、私は言うだろう。
おなかが、すいた。
最初のコメントを投稿しよう!