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「ユアン、君だろう?雫の時間を進めたのは?」
あれから天界に戻りユアンからグチグチと文句を言われウンザリしたユージンは、ユアンにそう問いかけた。
時を進める事が出来るのは死神だけだからだ。
ユアンはチラッとユージンを見つつシレッとした顔をしている。
「何でそんな事したの?」
「あのままだとアイツがもしかしたら諦めてしまうかもしれないだろう。それだとミカエルの時と同じになる。
俺は、ユージンまで失ったら自我を保つ事など出来ない。」
「俺はミカエルとは....」
「ユージン、これだけは言っとく。俺はお前の事をミカエルの代わりと思った事は一度もない。」
ユアンの鋭く力強い視線に絡めとられてユージンは身動き出来ない。
「お前は俺の側にいろ。永遠に」
ユアンの黒い羽がユージンをそっと包む。
ミカエル。
ごめんね。
俺はユアンの側にいるよ。
君の代わりでなく俺の意思で。
ユージンはユアンの背中に手を伸ばして触れた。
死神で体温などないはずの彼の体がほんのり温かい気がしてユージンはユアンの肩に頭を乗せて目を閉じ、ずっとひた隠しにしてきた気持ちが溢れ出さないように唇を固く閉じた。
けれど抱きしめられる喜びに思わず笑みが溢れてしまい止める事は出来そうになく、少しの間だけと自分に言い聞かせユアンのほんの少しの温もりに身を委ねた。
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