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上から自分を眺めるのは不思議な感覚だ。
ユージンが差し出して来た手を握ると一瞬にして静かな病室の中にいた。
ベッドに眠る自分は頭から包帯が巻かれさらに右目にかけて覆われていて、いくつものチューブが体に繋がり機械音がピピっと鳴り続けている。
ユージンは手を繋いだまま床に降り立ち僕の体の側に連れて行った。
白い血の気のない顔。
今にも生命が終わりそうな予感を感じさせる姿にさすがに青ざめた。
「生き返る際には痛みがないようにするから安心して。周りの人間にはカモフラージュじゃないけどそれらしくしないとダメだからさ。
大袈裟な感じになっちゃってゴメンね」
ユージンは頭をカリっと掻いて新人だからバリエーションないんだよね。と苦笑いした。
「天使も大変なんだね。」雫の言葉に驚いた顔をしたユージンは「君、やっぱり面白いね」と呟いた。
「お願いです!雫に会わせて下さい!」
懇願する切迫詰まった声が聞こえて雫は振り向いた。
不思議な事に本来ならば壁があって見えないはずの病室の外側が透けて見える。
「俺と手を繋いでいたら何もかも綺麗に見えるよ」と得意気にユージンは胸を張る。
泣きながら叫び声を上げた人を嬉しいのか悲しいのかよく分からないまま雫は見つめた。
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