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雫にはずっと好きな人がいた。
けれどその人とは結ばれる事などない事はずっと前から分かっていた。
雫の想い人は同じ高校の同級生でずっとひたむきにただ好きだった。彼が同性ゆえに想いを伝える事も気持ちが通じる事も叶わないと分かっていた。
だから、卒業式に彼への想いを振り切るために告白したのだ。
ずっと好きだった。
好きでいる事を許して欲しいと。
彼は雫を抱きしめて震えながら「俺も好きだ」と告げた。その瞬間、雫は死んでもいいと本気で思ったのだ。叶わぬ想いだと思っていたから。
想いは通じ合ったが、お互いに問題を抱えていた。雫の通っていた学校は所謂金持ちが通う高校で次代の経営者になる者がほとんどだった。
親が会社の社長で子供は後継ぎ。
学校に通うほとんどの生徒が時期経営者候補のエリート養成校だったのだ。だから、雫はもちろん彼も将来は会社を継ぎ後継ぎを作る。
それが、決められた道であり踏み外す事など許されない事だった。
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