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雫の両親は代々続いて来た由緒正しい家柄で互いに戦略結婚と割り切って家族という形態を維持していた。
父も母も愛人がいて対外的な時のみ家族というコミニティーを形成する。そういう家庭だった。
だからなのか、雫は家族ましてや結婚に対して夢などなくただ親が決めた相手と一緒にならなければならないのだろうと幼い時から諦めていた。
でも出会ってしまったのだ。
胸が打ち震えるほどの高鳴りを感じ
彼が存在する喜びに泣きそうになる。
葛城雅との出会いが雫の人生を変えてしまった。
雅を知ったのは高校だった。
彼は幼稚舎からの繰り上がりである雫とは違い外部受験で入学してきた本物の秀才だった。
首席で入学式で挨拶する彼に一目惚れをした。
ただただ眩しい彼を遠くから眺めるだけで良かったのに何故か自分が生徒会の副会長に祭り上げられ会長になった雅とはペアのようにいつも側にいた。
「雫、それ一口頂戴」
いつも昼ごはんを甘いパンばかり食べていた自分のを欲しがる雅に、ある日ちゃんと雅の分も買って差し出した事があった。
なのに、まだ開封されていないパンには目もくれず雫の食べかけを欲しがり手ごと引き寄せパンを齧る彼の口元に色気を感じ目眩を覚えた。
ギリギリ胸に溢れないように少しずつ息を吐くように雅への想いを抑え、何とか卒業式を迎えた雫の前には雅の周りに集まる沢山の人達が目に入った。
そうだ。
彼は自分とは違う。
人に慕われ上にいく人間なのだ。
あまりに近くにいたから危うく勘違いをするところだった。
.....でも、きっともう会う事もないだろう。
何故なら雅が卒業後アメリカ留学する事を知っていたからだ。
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