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最後だから
思い出に。
本当は自分の気持ちに区切りをつけたかった。
不毛な片思いは膨らみ続けて雫の胸は苦しさに悲鳴をあげそうだったから。
もし、嫌な顔されてもどうせ会う事はない。
せめて雅の顔を忘れないように目に焼き付けよう。
ただそれだけ。
何も期待などしていなかったのに。
雅に抱きしめられた瞬間、涙が溢れて止まらなかった。
「俺も好きだ」
その短い言葉に彼の精一杯の気持ちが込められていて抱きしめてくれた両手は少し震えていた。
雅の留学は前から決まっていた事で気持ちが通じていきなり遠距離になってしまったけれど、今の時代は毎日顔を見て話しが出来るし触れられないもどかしさを除けば乗り越えていけた。
雫は雅の顔が見れるだけで幸せだったし
雅はいつも気持ちを伝えてくれていたから。
「雫、大好きだよ」と
雅が留学を終えてもうすぐ帰国する。
雫は毎日カレンダーを見ては落ち着かない毎日を過ごしていた。
もうすぐ。
もうすぐ雅に会える。
その事だけを気にしていたせいか
自分の周りの環境の変化に気づいていなかった。
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