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「お見合い.....ですか?」
久しぶりに父が帰宅したのに合わせて母もいる事に違和感を感じながら、無駄に広すぎるリビングに通された瞬間から嫌な予感はしていた。
だが、まさか
お見合いだなんて。
まだ自分は大学2年。
社会にも出てない学生だ。
「形は見合いだが、実際には婚約前提のだ」
え?
雫の予想に反して父が告げた言葉は全く予想してないものだった。
「しかし、私はまだ大学生ですし」
「だから何だ。相手がすぐにでもと言ってるらしいから婚約でいい。この前のパーティーでお前を見たらしくてな。あちらさんが是非というのを断る理由がない。相手はあの坂下だからな」
坂下。
日本でも有数なホテル経営を担う会社で海外にも多数拠点を持つ富豪だ。
雫の父の会社など足元にも及ばない。
繋がりを持てるならば雫を差し出すのは当たり前だろう。
「お前の意見は聞かない。これはビジネスだ。
分かったな」
「雫さん。おめでとう」
父に続き母までもまるで当たり前かのように決定事項だと告げる。分かっている。雫は一人っ子だから逃げる事など出来ない事は。
だけど、せめて
一度だけでも。
本当に好きな人と結ばれたい。
それが、最後の繋がりであったとしても。
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