<51・Izuru>

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 礫が止まった。その代わりに、足元に散らばっていたいくつもの破片がどんどん寄り集まっていく。  やがてそれらは、巨大な槍を形成した。まっすぐ、つばめの脳天、あるいは心臓を貫けるように。 ――それでいい。  つばめは真正面から変身したイヅルの姿を睨む。 ――私を殺すことだけに囚われた君は、あっという間に周りが見えなくなった。他の人を先に殺すことも人質にすることも考えられず……ひたすら私だけを憎悪のまま攻撃して殺そうとしてくる!  彼が、バラバラの礫に変身したままだと作戦に支障を来す。だからわざと挑発して、攻撃力の高い武器に変身させたのだ。 ――それはつまり、私達にとってもチャンスということ! 「瑠璃香!」  ずずん、と地面が揺れた。同時に、動けない状態の京也がどうにかイヅルに向けて複数の矢を飛ばす。 『このっ……うざったい!』  石槍になったイヅルに、光の矢の波状攻撃なんてさほど効果はあるまい。だが、注意を引くには十分。  そう。一瞬でいい。  瑠璃香が己を巨大化させ、天井を崩落させるまでの時間稼ぎができれば。 「はあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」 『二年二組、狩野瑠璃香(かのるりか)。  攻撃力10  守備力20  体力30  敏捷性20  魔力10  知力10  手で触れたもののサイズを自由に変換することができる。サイズはスーパーボールくらいから、4メートルくらいまで。【ただしサイズが変更されるのは、触れてから十秒間のみである】』  4メートルもあれば、天井を破壊するには十分だ  彼女は僅かとはいえ攻撃力にも数値を振っている。バラバラと崩れてくる天井。気を取られていたイヅルは、避けられない。 「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」  石槍の姿のままイヅルは崩れてきた天井の下敷きになった。そして、驚いた拍子に変身が解けて、元の少年の姿に戻ってしまう。 ――やっぱり、そうだ!
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