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<52・Tsubame>
つばめたちが通されたのは、玉座の間だった。
想像したのは、不思議の国のアリスである。アリスを裁く、横柄な女王がいる城。アリスは無実を証明しなければ首をはねられてしまうが、その場所にアリスの味方はいなく、弁護士もいない。不当でとても裁判などと呼べるものではない愚かな儀式。決まりきった結末を悟り、一体どれほど少女は絶望したことだろうか。
しかし、つばめは違う。
絶望はなかった。イヅルを失い、手を地に染め、それでもなお絶望に負けることだけは許されないと知っていた。
これが、最後の賭け。
勝負に勝てるかどうかは――自分の決意と、タイミングにかかている。
「よくぞここまで辿り着いたのう。実にあっぱれじゃ!」
濁った声でそう言ったのは、金ぴかの巨大な椅子に座る――大柄な女性。
背も大きければ、横幅もある。でっぷりとした肉が腹の上に乗り、丸太のような足を大きく座ってどっしりと座っていた。身に纏っているのは、キラキラと悪趣味なビーズが大量にちりばめられたドレスのようなもの。
「貴女が、この国の女王なのですか?」
訝しく思ってか、桂月が声をかける。すると女王らしき女は、その周囲にいる多くの人間たちと共に笑い声を上げた。
広い広い玉座の間にいるのは、女王と、彼女を取り囲む金ぴかの服を着た男達。全員に共通しているのは、総じて衣装が派手で華美ということと――みんな、身長が5メートル以上もあり、でっぷりと太っているということだった。
「おかしなことを言うものじゃ。妾が、このような小さき小さき国の女王であるはずがなかろう?」
「ということは……」
「うむ、そなたの想像した通りじゃ。妾たちは天上貴族と呼ばれる、神の一族よ。妾、クリスティーナがそのリーダーである。そなたらは今、神と謁見を許されておるのじゃ。喜び称えるが良いわ!」
「……貴女がたが……」
全員、顔を見合わせる。
つばめが予想した通りではあった。この異世界バトルロワイアル――天上貴族を退屈させないために開催されたという話。ならば、最後の最後、勝者を間近で見たいという好奇心に勝つことはできないだろう、と。
勿論、自分達を恨んでいる可能性が高い参加者の前に姿を現すのは、一定のリスクがあるはず。
だが、彼女らはこの世界の全てを統べるだけの力を持つといいう。ならばその力とは、単なる権力だけではなく――。
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