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「人間どもに自由にチートスキルを与え、躍らせることも容易よ。……うむ、今回のゲームのなかなかに楽しませて貰ったものじゃ。思いがけずこの世界を気に入り、永住することを望むもの。生き残るために、五十人さっさと人を殺そうと目論む者。よもや、スキル未設定のそなたが生き残るとは思わなんだが……いやはや、これは大穴に賭けたガロン公の大勝利じゃ、そうであろうの!」
「ええ、そうですね、クリスティーナ様」
「ガロン公にもあとでお伝えいたしましょう。きっと喜ばれますぞ」
「ああ、ちょっと悔しいですな。私は馬淵十影がもう少し暴れてくれると思ったのですが」
「日野早苗も、あそこで退場するには惜しい駒でしたな。なかなかいいスキルを持っていたのに……」
彼等は笑いながら語る、語る、語る。ふざけんなよ、と隣で京也が小さく呟くのが聞こえた。瑠璃香も唇を噛みしめている。蒼夜は俯き、皇は震えていた。その震えが怒りからなのか、悲しみからなのかはわからなかったが。
よく、わかった。
これが、天上貴族という連中なのだ。彼等にとってはこのゲームで必死で戦った者も、この世界で生き残ろうと願った者も、死んだ者も生きた者も――等しく賭け事の駒にすぎない。取り換えなどいくらでもきく玩具。善意も理性も狂気も執着も信念も、その悪意の前では同じようにすりつぶされて無に帰していく。
『一番悪いのは、人の命をゲームの道具としか思ってないこの世界の連中さ。あたしが物心ついた時にはもう、この国は天上貴族の玩具だった。あの人らが好き勝手に、あたしらの国の中でゲームをして、暇をつぶしていく。逆らった者は反逆罪でみーんな殺されてますます命を縮めていく。あの人らの圧倒的な力の前じゃ、あたしらの命と意思なんて蚊よりも儚いものだからさ……』
ウェイトの村で、おばあさんが言っていたことを思い出す。
この世界の人々はずっとずっと長いこと、この悪意の権化たちに苦しめられ、尊厳を貶められてきたのだ。
神ゆえに、殺せない。
神ゆえに、逆らえない。
どれほど涙を流しても、訴えても、叫んでも、心のない連中に人間の言葉が届くことなどけしてないのだ。彼等は考えもしていないのだろう。自分達の悪意が、いつか自分達に返ってくるかもしれないなんてことは。それだけの力があるからこその、驕り。
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