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「さてさて、そろそろええかの?そなたら五人は勝者じゃ。ゆえに、好きに願いを叶えてやろうぞ。無論、元の世界に帰りたいと言われても叶えよう。我らは神であるからの、なんでも可能ゆえ!」
「……なんでも?」
「そうじゃ、なんでもじゃ!」
なんでも言うがよいぞ、とクリスティーナは大きなお腹と胸を震わせて笑う。だから、つばめは。
「じゃあ、全部なかったことにして」
告げる。
自分の何よりの願いを。
「この異世界バトルロワイアルで起きた悲劇を全てなかったことにして、私達を元の世界に帰して。そして、もう二度、我々もこの世界の人々も、それ以外の人々も召喚しないで。こんなゲームに巻き込まないで。なんでもできるなら、可能でしょう?」
すると。クリスティーナは呆れたような顔でため息をついた。
「あのなあ。一人で願いが多すぎじゃ。何事にもバランスが必要、わかるかえ?そなたが元の世界に帰りたい、それで充分であろう?」
「できないの?私の願いを叶えることが」
「できるとも。しかし、我々は事前事業でもなーんでもないのでなあ?そもそも、この異世界バトルロワイアルは我らにとって数少ない楽しみよ。それをやめろというのは、いささか傲慢ではないかえ?吾妻つばめよ」
「つまり、その願いを叶える気はないと?」
「もう少し慎みを持てと言っておるのじゃ。そなたも女であろう?あんまりにも傲慢じゃと、好いた男に嫌われてしまうぞ?ああ、その男はつい少し前に死んだのであったかー。いやはや、それは可哀想ではあったがなあー」
はっはっは、と悪びれもせず言う女王。
その瞬間だった。つばめの心は、決まっていたのだ。ならば。
「だったら」
手に持っていたスマホを取り出した。
もうすでに、文章は打ち込んである。あとは、送信ボタンを押すだけ。
「この願いは、私が自分で叶える」
「は?」
送信。
女王は数秒あっけにとられた後、どうやら気づいた様子でお尻のポケットから端末を取り出していた。つばめが、まさかのまさか、今になってスキルを設定したとわかったのだろう。
ずずずずずず、と緩やかに城が震え始める。地震。否――この世界の、この時間の、空間の。あらゆるものが崩壊を始める音だ。
「お、おぬし……」
女王が真っ青な顔になって叫んだ。
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