<2・Scourge>

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<2・Scourge>

 ずる、ずる、ずる。  その黒い巨人は、ゆっくりと穴の中から這い出してきていた。 「なに、あれ?」 「さあ……?何かの演出?」 「なに、イベントお?」  教室にいた者達が皆気づいてざわついている。しかし、不思議そうな声を上げる者はいても、怖がったり怯える者はいなかった。あまりにも非現実すぎて、いまいち実感がなかったのかもしれない。あるいは、CGやら特殊メイクの着ぐるみやらが進化したご時世というのもあるのかもしれなかった。あれくらい、その気になれば今の科学で作れるだろう、なんてことを思ってしまったのかもしれない。  実際、つばめの感覚も似たようなものだった。  校庭になんか変なのがいる。誰が作ったんだろう、アレ。感想なんて、その程度である。 「んあ?」  ぴろりん、と電子音が鳴った。しかもそれが、教室の、学校のあちこちでいくつもいくつも鳴り始める。どうやらみんなのスマホの音らしい。  つばめは自分の携帯を取り出して首を傾げた。スリープモードが勝手に解除されて、妙なお知らせが出ている。 『異世界転生バトルロワイアルゲーム、インストール完了』 ――いせかいてんせい、ばとるろわいある?  バトルロワイアルっていったらあれだ。複数の人間が集められて殺し合いをするという、典型的なデスゲーム。昔そういう映画とか小説とかがあったらしい、という話は聞いている。R15指定で映画が公開されたと当時は有名になったとかなんとか。  なお、漫画版は古本屋で立ち読みしたことがあったが、R15ではなくどう見てもR18だろ、と突っ込んだのは此処だけの話。ぼかも何もなしにエログロが乱舞していた。青年向け雑誌の中でもかなり過激な方に分類されるだろう。  と、それはいいとして。 ――なんだこれ?アプリが勝手にインストールされたってこと?ゲーム?  思わずスマホを振ったり、画面をタッチしてしたりしてみる。しかし、画面は“インストール完了”と文字が出た後、“転生開始までしばらくお待ちください”と表示されて動かなくなってしまった。  タイトルからして、なんらかのゲームアプリなんだろうと思われる。しかし、今は授業中でスマホを触っていたわけではないし、こんな得体のしれないアプリをDLした覚えもない。それはきっと他の生徒たちも同じだろう。というか、教卓の前に立っていた先生さえ、スマホを見て“なんじゃこりゃ!”と声を上げている。さすがにおかしい。  こんなに一斉に、謎のアプリがインストールされるなんてありえない。みんなでウイルスにでも感染してしまったのだろうか。 ――駄目だ、画面完全に固まってる。どうしよう、壊れちゃった?
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