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「玲央ぉぉ……れお」
耳に絡みつく声に張り詰めた自制心が弾けた。
「いい加減にしろよ!!」
響也の首筋に顔を埋めてきつく吸いながらベルトに手を掛けた。
だめだ──いや、ダメじゃない。
「玲央……やっと……言えた」
その微かな囁きの熱が俺の暴虐を阻んだ。
腕が俺の背に静かに回される。肩甲骨の上で両手がぱたりと落ちた。すがりつく抱擁に対して強くしがみつく。
しばらくして、響也の寝息と鷲掴みにされた俺の心臓の鼓動が再開した。
響也の腕をふりほどけず、間近で鈍く光るピアスにピントが合う。
「これ……」
気に入って着けてるピアスのデザインに似てる。
イニシャルが彫られてて「エル(L)……5/11」と、 読めた。
抵抗しても吸い寄せられる。無理やり目を逸らす。意味なんかない。今さら。
求めるにはもう遅いんだ。
迷うのも、確かめるのも。落ちる覚悟を決めるのも。遅すぎるんだから。
でも視線が答えを求める。瞼を閉じて両手で顔を覆う。
「何だよ。これ、何だよ。意味わかんねえよ」
追求するな。
空気を抜いて萎ませた風船が心臓を圧迫する。
響也の寝息と破裂しそうな心音で狂いそうだった。
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