響也

9/14
前へ
/27ページ
次へ
「ほどけてる……」  しなやかな指先が俺のスニーカーの紐を掬い輪を作る。 時が止まる。色も音も消えて響也の指先だけがスローモーションで心臓と血流音だけがノイズみたいに響いて。 響也の指先一つに絡め取られる。 永遠に思えた。永遠で欲しかった。 恋?愛?はっ──笑える。 だけど──恋に落ちるって。こんなに簡単で、こういうことなんだって、その瞬間に死ぬほど分かってしまったんだ。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加