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風船
「ううん」
響也がエロい声をあげて寝返りを打った。
追憶の余韻を引きずったまま現実の俺に帰ってきてしまった。
寝顔は高校んときと変わらないのに、激狭ワンルームのベッドで響也は酔い潰れてる。
「酒くさ……」
いつまでも高校時代の甘い記憶に浸ってたかった。
同じベッドの上でも──ジンみたいに苦い。
結婚式は明後日だ。友だちという立ち位置は変わらないけど、一番近くという位置にはもう立てない。いっそ天然こそ悪気ない悪意と思えてきた。
苦い現実を噛みしめながら、響也の寝顔を独り占めする。
「玲央……」
甘えた声。
寝返りで髪が流れて左耳が剥き出しになる。
「ちっっ今夜に限って……煽るような声出すんじゃねえよ」
派手に舌打ちすると、静けさがやけに響いた。
気まずくて少し落とした照明が、響也のシルバーのピアスに反射する。
寝息を確認して指で摘まみ顔を寄せる。
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